トワ(永遠)、そして杜若、黄菖蒲

夕やけ橋のたもと

5月3日(金)午前10時ごろ、トワの散歩に出る。

彼はたっぷり2時間40分もかけて、井の頭公園・三角広場→夕やけ橋→うぐいす小路→ジョギング通りのコースの端から端まで、何度となく往復を重ねる。
前半は身内に元気が目覚めてくるような、きびきびした足どりで歩き、そして後半は疲れをしのぐかのような、ゆるゆるとした足どりで歩く。

夕やけ橋を渡るたびに、目に飛び込んできた自然の風物があった。
神田川の水辺に群生するカキツバタ(杜若・燕子花)とキショウブ黄菖蒲)がちらほらと咲き始めていた。
色鮮やかで、形もきれいな花だ。心を和ませる静的な美しさがにじみ出ていた。 

                   

ところで、この花の名、カキツバタキショウブについては、疑義を呈する人もいる。
人(公園利用者)によっては、ハナショウブ(花菖蒲)と言い、アヤメ(菖蒲)と言う。私がトワの散歩中に見知った人々(近隣住民)の多くは、ハナショウブを主張する。

アヤメ、カキツバタハナショウブキショウブはすべて、アヤメ科アヤメ属の多年草である。だから、この4種は皆同じ仲間できわめて近い関係にある。たいそう似ていて見分けがつきにくいのだ。
その見分け方については、その道の専門家によって花の色、花の背丈や大きさ、花弁の特徴、葉の形状、適地(花の咲く場所)、開花期等々の判断基準が定められている。
しかし私の素直な気分としては、それらをこまごまと判別すること自体がわずらわしく、言葉の分節化の弊に陥った、知ったかぶりのスコラ的講釈は避けたいところだ。
今は、ひたすら造化の妙に感動し、自然美を愛でたい!

ただし、私は正直言って、夕やけ橋のたもとの川べりに咲く、(黄色の花を咲かせるキショウブ以外の)あの、紫色の花はカキツバタにちがいないと勝手に思い込んでいる。
なぜ、カキツバタなのか。それは私の個人的なこだわりにとらわれた予断なのかもしれない。
私はこれまで、事に触れて何度も、「いずれアヤメかカキツバタ」という慣用句を思い出すとともに、
有名な『伊勢物語』(平安時代初期に成立した歌物語)で在原業平が詠った、カキツバタの歌(折句)、
 【か】らころも 
 【き】つつなれにし 
 【つ】ましあれば 
 【は】るばるきぬる 
 【た】びをしぞおもふ

を口ずさんだものだった。