トワ、クリ、ハナ

5月6日(月)午前9時半から午前11時40分頃まで、トワ(永遠)の散歩をする。

彼はいつも通り、自宅から井の頭公園・三角広場に直行。
そして約2時間、広場のみを散歩しつづけた。
右に左に目まぐるしく歩き回りつづけ、やがて時々ゆったりと休む…。
木陰にたたずみながら、軽やかな風のそよぎに身をひたす姿は、見るからに満足そうだった。

彼にとって、それはいつもと同じ至福の時だったにちがいない。
彼の幸せは、そのままに私の幸せである!

★午前11時30分ごろ、散歩の終了間際に、私は2か月ぶりにEさんと会う。
彼女は2頭の犬、クリおよびハナと散歩中だった。
クリとハナは、血肉を分けた仲の好い親子だ。年齢は当年とって、母親のクリが16歳、娘のハナが9歳。
トワとクリ‐ハナは、邂逅を喜び合った。ぴょんぴょん飛び跳ねて、手放しの喜びようだった。
彼女と私の立ち話が続く間も、三者は互いの感情を確かめ合うかのように、飽かず肌と肌とを触れ合って無邪気に戯れ合うのだった。

トワはクリともハナとも、そもそもの始まりから相性がよかった。
トワが初めてクリ‐ハナと出会ったのは、今から3年ばかり前のこと、三角広場近くの一私宅の門前(→門越し→門内)だった。
それは吉祥寺有数の立派な邸宅であり、格子状の開放的な、中がうかがえる門を構えていた。
私とトワがその門前を通りかかったとき、門内から突然、ワンワン!ワウワウ!2頭の犬の吠え声が挙がった。
瞬間、トワとクリ‐ハナの親密な関係が電光石火で実現する!
門外のトワと門内のクリ‐ハナとは互いに、ちぎれんばかりにシッポを振りながら、門際を嬉々としてはね回った。特にトワとクリは、しきりに鼻をくんくん鳴らしながら、互いの鼻先を門越しに何とかくっつけ合おうと必死だった。まるで初恋の相手を追い求めるかのように…。

私は門前にじっと佇みながら、トワとクリ‐ハナの繰り広げる甘美な情景に何心なく見入っていた。
と、まもなく門の向こうから女性がつかつかとやって来て、おもむろに門を開けた。そして、トワを見つめながら、物静かに口を開いた。
「マア、かわいい、きれいな犬ですね。クリもハナも関心が強いようだから、ウチの中庭に入って、しばらく一緒に遊んでいきませんか…」
私は品格のある彼女の、雰囲気のある言葉にほだされて、一も二もなく応じた。
約20分間、門の内側の広い中庭で、私の手綱さばきのもとに、トワ・クリ・ハナの三者ははしゃぎ回って遊びつづけた…。

この女性こそ、Eさんであり、特に1960年代から80年代にかけて、ピアニストとして国内外で活躍された方である。